公差のコストと、指定すべき公差の選び方
公差は図面の中で価格を決める寸法であり、最もテンプレートからそのままコピーされやすいものでもあります。すべてを厳しく指定した部品の見積は、重要な3つの形状だけを指示して妥当な普通公差を付けた同じ部品の、数倍になることがあります。ここでは、それらの数字で実際に何を買っているのかを説明します。
公差にかかっているコスト
公差を厳しくすると、4つの別々の場所でコストが増えます。そのため影響は掛け算で大きくなります。
- 仕上げ加工。 最後の数百分の1ミリを正確に削るには、遅くて軽い切削が必要です。それは機械時間です。
- 工具摩耗の管理。 刃物が摩耗すると寸法がずれていきます。厳しい公差では、工具交換や補正の頻度が上がります。
- 検査。 厳しい形状は測定が必要で、多くはCMMを使い、サンプルではなく全数測定になることもよくあります。
- 不良と手直し。 範囲が狭いほど、外れる部品が増えます。その費用は誰かが払います。
公差を緩めれば、この4つがすべて同時に改善します。図面上で最も効果の大きい変更が公差である理由です。
加工会社が特別な努力なしに守れる範囲
以下は一般的な範囲であり、保証ではありません。お客様の形状、材料、サイズで何を守れるかは、見積を出す加工会社が確認します。
| 形状 | 無理なく守れる一般的な範囲 | 備考 |
|---|---|---|
| 一般的な長さ寸法 | プラスマイナス0.1 mm 前後 | 加工部品の普通公差注記として一般的 |
| はめあい形状、フライス加工 | プラスマイナス0.05 mm 前後 | ほとんどの機械で日常的に実現できる |
| 穴、リーマー仕上げ | プラスマイナス0.02 mm 前後 | 標準的なリーマーで再現性よく実現できる |
| 厳しいはめあい形状 | プラスマイナス0.01 mm 以下 | 高価になり、温度管理とCMMでの検証が必要 |
| 加工面の平面度 | 部品サイズと断面による | 薄い部品は歪むため、数字よりサイズが重要 |
| 表面粗さ、削り出しのまま | Ra 1.6 から 3.2 マイクロメートル | より細かい値には追加の仕上げ加工が必要 |
大きな部品ほど難しくなります。50 mm の範囲では日常的な公差も、500 mm では難しくなります。熱膨張、固定、機械の幾何精度がすべて長さに比例して効いてくるためです。部品全体への一律のルールではなく、必ず形状ごとに公差を指定してください。
一律の普通公差注記が危険な理由
「指示なき寸法はすべてプラスマイナス0.02 mm」は、よくある注記であり、高くつく注記でもあります。すべてのエッジ、すべての面取り、機能に関係ないすべての寸法が重要だと加工会社に伝えることになるからです。
2つのことが起こります。まず、全体的に価格が上がります。そして、加工会社はどの形状が本当に重要かを判断できないため、注意を均等に配分します。つまり、重要な形状が、重要でない形状以上に丁寧に扱われることはありません。
よりよい書き方は次のとおりです。
- 一般的な部分すべてをカバーする、緩めの普通公差注記
- 少数の、明示的に公差を指定した形状と、それぞれの測定基準となるデータム
- そのうちどれが機能上重要かを示す短い注記
はっきり示された3つの重要寸法は、同じレベルで指定された30の寸法よりもよく守られます。
はめあいと、それが数字よりよく伝わる理由
組み合わさる形状には、数字だけの公差よりも標準のはめあい記号のほうが多くの情報を伝えます。穴に12H7と書けば、呼び寸法、公差域、そして重要なことに意図、つまりそこに軸が入ることが加工会社に伝わります。
日常的に使われるはめあいは3種類です。
- すきまばめ。 部品は常にすき間のある状態で組み付けられます。回転または摺動する軸や、ボルトの通し穴に使います。
- 中間ばめ。 わずかにきつくなることも、わずかに緩くなることもあります。組み立てと分解を繰り返す位置決め形状に使います。
- しまりばめ。 組み付けには圧入や焼きばめが必要です。動いてはならないベアリングやブッシュに使います。
ベアリング用の穴を指定するなら、はめあいを明記してください。H7を見た加工会社は、リーマーで仕上げ、ノギスではなくボアゲージで測定すべきだとわかります。
幾何公差を一段落で
寸法公差は大きさを管理します。幾何公差は形状、姿勢、位置を管理します。平面度、直角度、同軸度、位置度などです。どの1つの寸法よりも形状同士の関係が重要な場合に意味を持ちます。
実務で最もコストを削減できるのは、穴パターンへの位置度の指定です。ボーナス公差付きの位置度で管理した穴パターンは、すべての穴の間を厳しいプラスマイナス寸法で管理した同じパターンよりも守りやすく安価です。しかも、ボルトが通ればよいという、実際に必要なことをそのまま表現しています。
公差と検査は同じ判断
測定できない公差は、守られているのではなく、守られていることを期待されているだけです。範囲を指定する前に、加工会社にそれを検証できる機器があるか、そしてお客様側に受入時に検証できる機器があるかを確認してください。
加工会社の最も細かい測定能力が、お客様の最も厳しい公差より粗ければ、部品が正しくても証明できません。このずれは、紛争の最中ではなく見極めの段階で見つけておく価値があります。
これは、どの書類を求めるかも左右します。重要形状に絞った初品検査は、すべてを測定した報告書よりもはるかに価値があります。
誰も触れない温度の問題
計測の規格は20°Cを前提にしています。32°Cの工場で測った部品を涼しい検査室で測り直すと、同じ数字にはなりません。また、同じ温度変化でもアルミニウムは鋼のおよそ2倍動きます。
普通公差ではこれは誤差の範囲です。しかし長い寸法でプラスマイナス0.01 mm となると話は別です。お客様の部品にそのレベルの公差があるなら、加工会社がどこで何度で測定しているかを尋ね、具体的な答えを求めてください。
図面を送る前の書き込み方
- 公差が指定されたすべての寸法について、2倍ずれたら何が壊れるかを考えます。
- 答えが「何も壊れない」ものはすべて緩めます。
- 残ったものには、それぞれの測定基準となるデータムを明記します。
- 組み付けが目的なら、穴と穴の間の厳しい寸法を位置度に置き換えます。
- 組み合わさるものには、標準のはめあい記号を使います。
- 普通公差注記は、部品が許容できる最も緩いレベルに設定します。
- 測定して報告してほしい形状を明記します。
この見直しにはたいてい1時間ほどかかりますが、どんな価格交渉よりも価値があります。その他の手段は設計変更のガイドにまとめています。
図面への書き込みが終わったら、こちらからお送りください。ベトナムの加工会社最大3社が、本当に重要な点に基づいてお見積を出します。
よくあるご質問
加工会社が標準で守れる公差はどのくらいですか?
ほとんどの加工会社は、ほとんどの形状でプラスマイナス0.1 mm 前後の普通公差なら無理なく守れます。個別に指示された寸法では、より狭い範囲も実現できます。正確な答えは形状、材料、部品サイズによって変わるため、加工会社には一律の数字ではなく、お客様の形状で何を守れるかを確認してもらうべきです。
公差は厳しいほど精度が高いのですか?
厳しい公差は高価で検証も難しくなりますが、それは品質が上がることと同じではありません。測定できない公差は、誰も守っていない公差です。はめあいと機能を左右する部分を厳しくし、残りはそのままにしてください。
公差とはめあいの違いは何ですか?
公差は1つの寸法がどれだけばらついてよいかを示します。はめあいは組み合わさる2つの部品の関係で、両者の公差の組み合わせから決まります。H7のような標準のはめあい記号を指定すると、数字だけよりも意図がはっきり伝わります。