部品輸送のほぼすべてをカバーする4つのインコタームズ
同じ部品の2つの見積が、価格の横にある3文字以外に何の理由もなく3分の1ほど違うことがあります。インコタームズは、輸送のどこまでが数字に含まれるか、危険がどこで移転するか、そして両側の通関を誰が担当するかを決めます。これを誤っても、最初の出荷で損をすることはあまりありません。損をするのは、問題が起きた出荷の費用を誰が払うかという議論です。
以下は、加工部品の輸送のほぼすべてをカバーする4つの条件を、発注者が出会う順に並べたものです。
EXW(工場渡し)
加工会社は部品を製作し、自社の敷地内のどこかに置きます。その後はすべてお客様の担当です。
- お客様が手配: 引き取り、輸出通関、輸送、保険、輸入通関
- お客様が負担: そのすべて
- 危険の移転: 加工会社の敷地で、積み込み前
- 見積価格に含まれるもの: 部品のみ
EXWは最も低い数字と、最も多い手間をもたらします。仕入先の国に、貨物を引き取って輸出通関できるフォワーダーがすでにいる場合にのみ意味があります。厳密には、EXWでは売り手にトラックへの積み込み義務すらありません。これはどの発注者も一度は電話で揉めることになる細かな点です。
もう1つ問題があります。仕入先の国での輸出通関は、通常は現地の当事者が申告しなければなりません。EXWでは形式上それはお客様ですが、お客様には現地の拠点がありません。実際には加工会社やお客様のフォワーダーが好意で対応してくれます。それで問題ないのは、原産地証明書が必要な出荷で、その発行の根拠となる申告を誰もしていなかったときまでです。
FOB(本船渡し)
加工会社は指定された港まで部品を届け、輸出通関を行い、本船に積み込みます。そこからはお客様の担当です。
- 加工会社が手配・負担: 国内輸送、輸出通関、積み込み
- お客様が手配・負担: 海上運賃、保険、輸入通関、関税
- 危険の移転: 貨物が本船に積み込まれた時点
- 見積価格に含まれるもの: 部品、現地輸送、輸出書類
FOBは海上輸送の標準であり、ほとんどのリピート案件が最終的に落ち着く条件です。運賃を別に確認できるため交渉ができ、現地の書類は実際に申告できる当事者の手元に残ります。
FOBは海上輸送用の条件です。航空輸送に使うのは形式上誤りで、危険がいつ移転したかが曖昧になります。航空輸送では空港でのFCAが正しい条件ですが、それでもFOBと書かれたインボイスは多くあります。
DAP(仕向地持込渡し)
加工会社は、お客様が指定する住所、通常はお客様の工場や倉庫まで部品を届けます。輸入はお客様が担当します。
- 加工会社が手配・負担: お客様の住所までのすべて
- お客様が手配・負担: 輸入通関、関税と税金、荷降ろし
- 危険の移転: お客様の住所で、到着した車両上、荷降ろし前
- 見積価格に含まれるもの: 部品、すべての輸送
DAPは初回発注を進める最も簡単な方法です。輸送は他人の問題になり、それでいて関税と原産地の扱いを決める通関申告はお客様が管理できます。
落とし穴は、DAPに関税が含まれないことです。「持込渡し」という言葉を見てすべて含まれていると思い込み、運送会社から請求書が届いて驚く発注者がいます。「届けるが、通関はしない」と読んでください。
DDP(関税込持込渡し)
加工会社がお客様の住所まで届け、輸入関税と税金も支払います。
- 加工会社が手配・負担: 輸入通関と関税を含むすべて
- お客様が行うこと: 荷降ろし
- 危険の移転: お客様の住所で
DDPは理想的に見えますが、よい選択であることはまれです。売り手がお客様の国で輸入者(Importer of Record)になる必要があり、多くの国では売り手が持っていない現地の税務登録が求められます。DDPで見積を出す加工会社は、手続きを代行するフォワーダーを割増料金で使っているか、十分に理解していないものを見積もっているかのどちらかです。
隠れたコストもあります。DDPでは通関申告書を目にしないことが多く、申告価格、品目分類、原産地の主張を確認できません。この3つこそ、お客様の輸入が正しいかどうかを決めるものです。
比較表
| EXW | FOB | DAP | DDP | |
|---|---|---|---|---|
| 仕入先国内の輸送 | お客様 | 加工会社 | 加工会社 | 加工会社 |
| 輸出通関 | お客様 | 加工会社 | 加工会社 | 加工会社 |
| 主たる輸送 | お客様 | お客様 | 加工会社 | 加工会社 |
| 保険 | お客様 | お客様 | 加工会社、義務なし | 加工会社、義務なし |
| 輸入通関 | お客様 | お客様 | お客様 | 加工会社 |
| 関税と輸入税 | お客様 | お客様 | お客様 | 加工会社 |
| 仕向地での荷降ろし | お客様 | お客様 | お客様 | お客様 |
| 危険の移転地点 | 加工会社の敷地 | 本船上 | お客様の住所 | お客様の住所 |
保険の行に注目してください。この4つの条件のいずれも、売り手に貨物の保険を義務づけていません。義務があるのはCIFとCIPです。誰も保険をかけていなければ、誰も補償されません。
実際によく陥る落とし穴
異なる条件の見積を比較する。 最もよくあり、最も高くつく落とし穴です。価格を尋ねる前に条件を決めるか、比較する前にすべてを部品1個あたりの輸入総コストに換算してください。
DAPに関税が含まれると思い込む。 含まれません。含まれるのはDDPだけです。
航空輸送にFOBを使う。 形式上誤りであり、まさに明確にしておくべきタイミングで引き渡し地点が曖昧になります。
EXWで原産地証明書を忘れる。 原産地証明書は輸出申告に基づいて発行されます。輸出通関を加工会社の手から外したのであれば、原産地証明書を誰かが引き続き申請しているか確認してください。
港は指定したがターミナルを指定していない。 「FOB Vietnam」は条件になりません。「FOB Cat Lai」なら条件になります。港を指定してください。
危険と所有権が一緒に移ると思い込む。 一緒には移りません。インコタームズが配分するのは費用と危険です。所有権は契約に従います。
注文書に書くこと
規則、指定地、版を書きます。例えば次のとおりです。
FOB Cat Lai, Incoterms 2020
DAP 14 Industrial Way, Leeds LS10 1AB, United Kingdom, Incoterms 2020
この3つの要素があれば曖昧さはありません。指定地のない条件は条件ではなく、版を省くと、どの版が適用されたかで後から揉めることになります。
どの条件を依頼するかまだ決めていない場合は、RFQに「未定、相談したい」と書いてください。見積を依頼する価値のある加工会社なら、お客様の数量と輸送ルートに合う条件を教えてくれます。図面をお送りいただければ、ベトナムの加工会社最大3社が、合う条件でお見積を出します。
よくあるご質問
初回発注ではどのインコタームズを使うべきですか?
ほとんどの場合はDAPです。輸送を加工会社に任せられるため、お客様が最も経験の少ない工程がなくなり、輸入関税と税金は本来あるべきお客様側に残ります。数量が本格的になり、運賃を別に見たくなったらFOBに切り替えてください。
なぜ加工会社はDDPで見積を出さないのですか?
DDPでは、お客様の国での輸入通関と関税の責任を売り手が負うためです。これは通常、拠点も税務登録もない国で輸入者(Importer of Record)になることを意味します。DDPで見積を出す加工会社は、そのリスクをカバーするため、たいてい金額を大きく上乗せしています。
インコタームズで貨物の所有権は変わりますか?
いいえ。インコタームズが定めるのは費用、危険、そして誰が何を手配するかです。所有権は契約と支払条件に従って移転し、それは別の問題です。両者を同じものだと考えるのはよくある思い込みで、高くつきます。